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せいかつのみちより

生活の道より

宮本 百合子

「知識」1934(昭和9)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,528 字 · 5 页

青空文庫

の箇所に、特に彼女がゲーテの自然科学を研究した観念論者らしい態度に賛同し、自分も環境を無視して今地質の本をよんでいると書いているところで、強く感じたのであった。

情緒の昂揚に全身をまかせ、詩について音楽について、憧憬ている旅の楽しさについて物語る時、マルクス主義の立場で経済論を書くローザはいつともなく黙祷だの、美しさだの、神秘だのの感情に溺れている。雲の綺麗さに恍惚として彼女は「こんな色や、こんな形があれば、人生は美しく生甲斐がありますわね」とソーニャに書き、「神様や、空や、雲や、人生の凡ての美しいものはウロンケにいのこりはしません」私の生きている限り、私と一緒にいると云っているのである。

これらの言葉は、混り気ないローザの心の虹であり、私の感情に非難を呼びおこすどころか、寧ろこの偉大な活動家であったローザのロマンチックな熱情を、可憐なようにさえ感じた。

私は、一人の平凡な婦人である自分がローザの心持をやさしく眺めて、それをローザが生きていた頃よりは広い土台の上に立って批判をもしていることに、驚かされたのであった。

個人の才能ではローザのようにとびぬけたものでは決してあり得ない一人の女が、猶且つ卓抜なローザをその歴史性によって理解し得るということはどこからその力が生じているのであろうか。