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たはらしのはんざい

田原氏の犯罪

豊島 与志雄

「黒潮」1917(大正6)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,957 字 · 57 页

青空文庫

学校で特待生になったからその褒美に下すったんだ。そして、お前がいる時は金は家で出してやるからこれは父さんの所へ持ってゆけと云われたので、持って来た。父さんの自由に使っていいんだよ。」

徳蔵は暫く何とも云わなかったが、突然大きい声を出して云った。

「偉い!」

それから彼は急にその紙幣を一枚みよ子の前に投り出した。

「みよ、すぐに酒を一升買ってこい。いいか一升だよ。それから※を二枚。分ったか。早くするんだ、駈けて行ってくるんだぞ。」

みよ子は云わるるままに急いで表にかけ出していった。

みよ子が出て行った後に、徳蔵は一寸何やら考えるような風で首を傾げていたが、自分と自分の心に向って云うかのように口を開いた。

「偉い。お前が特待生になったんだと。それで旦那がお前に褒美の金をくれた。なるほど。金は家で出してやる。これは親父の所へ持ってゆけ……。さすが旦那は偉いや。お前も偉いや。俺もな、今じゃ飲んだくれだが、これで旦那のためには随分働いたもんだ。」

「よく旦那様は父さんのことを云っていられるよ。そして僕にも大変よくして下さるんだ。しっかり勉強しなけりゃいけないってよく云って下さるんだよ。