轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

たはらしのはんざい

田原氏の犯罪

豊島 与志雄

「黒潮」1917(大正6)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,957 字 · 57 页

青空文庫

彼女の眼は悲しそうに円く輝いていた。そして其処で彼女は時々兄に逢った。

みよ子の方では別に話すことも持たなかった。否恐らく種々こまかいことを持ってはいたろうけれど、そういう時には心がその方へ向いてはいなかった。良助の方も別に話すこともなかった。二人は黙ってじっと立っていることがよくあった。

然し特にそんな時に良助は田原さんの眼を恐れていた。一度もそれについて何か云われたり尋ねられたりしたことはなかったのだが、それでも彼は田原さんの眼を恐れた。それは単なる気兼や遠慮ばかりではなかった。彼はいつも田原さんの眼が何処からかじっと自分の方を見守っているような気がした。そしてその眼が自分の心のうちにも在るような気がした。

良助はよくふいと妹の許を立ち去った。みよ子は其処に置きざりにせられて、じっと兄の後姿を見送り、それから牛乳の壜の籠を取上げ、首垂れながら田原さんの家から出ていった。

然しみよ子のその悲しみは、しげ子や重夫の親切で幾分慰められた。しげ子はよくやさしい言葉をかけてくれた。重夫は時々菓子などをくれたり、小遣銭を与えたりした。そして月末の勘定の時、みよ子はいつも釣銭をそのままに貰っていった。