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いなかいしのこ
田舎医師の子
相馬 泰三
「早稲田文学」1914(大正3)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,947 字 · 76 页
それには、数えきれないほどさまざまな終焉の場合と、それについての饒多な実例とが挙げられてあった。中には、高い崖の上から落下して長い間気絶していた人や、溺死した人やのその人自身の詳しい実話などもあった。それ等の人々は、その後他人によって幸にして蘇生させられなかったならば正しくそのまゝ絶命してしまったに相違なかったものであった。……
その博士は貴族であった。それにゲーテなどを愛読している人のようでもあった。云わんとしている事がきわめて微細な科学的なものであるにもかかわらず、その云いまわしは典雅荘重をきわめていた。時にゲーテの詩の数句が引かれてあったりした。
彼は、明快を主とするのゆえをもって、口語体が一番良いと云った。それに対して彼の父はあくまでも漢文口調の文体を主張した。そんな事から議論に花が咲いて、しまいには全然それ等の事から離れたさまざまな問題にまで移り移ってゆくのを免れなかった。
七
老医師の云う所は、哲学というよりは当然それは処世術とも呼ばるべき種類のものに限られていた。彼は常に(欲望の節度、明らかな教養、気高い心ばえ)こうならべて云うのであった。