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いなかいしのこ
田舎医師の子
相馬 泰三
「早稲田文学」1914(大正3)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,947 字 · 76 页
そしてそれについて、その場合々々に応じてそれぞれ適当な説明を附けて行った。
「むやみに快楽を追おうとする所にいっさいの紛雑が生ずるのだ。苛れば苛るほど、藻掻けば藻掻くほどすべてが粗笨に傾き、ますます空虚となってゆくばかりだ。そうではないか。むしろ、常に我々を巡りややともすれば我々に襲い掛ろうとしている所の数知れない痛苦と心配とから離脱しようという事を希うべきだ。すべての悪しき雲のはらわれた後にこそ誠に『晴やかな平和、ゆるぎなき心の静けさがある。』のではあるまいか。」
「絶えざる修養によって迷を去らねばならぬ。そしてもっとも正しい生活に入る事を思わねばならぬ。そうすれば不安や恐れが無くなるのであろう。間違がないという事より強い事はない。泰然として他の何物からも煩らわされるという事がなくなるであろう。」
「それからまた、我々は高尚にならねばならぬ。滅び易き形や物に淡くなり、永く続くであろうところの心と美とは濃くなってゆく事が必要である。こういう風にして初めて限りもなく都合の良い友情とか善意とかいうものが広く成り立つのである。そうなれば、自分一個人だけではなく、我々の住んでいる社会全体がいかにも滑らかに滞りなく愉快なものとなるであろう。