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こうしゅうちんぶたい
甲州鎮撫隊
国枝 史郎
「講談倶楽部」1938(昭和13)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,891 字 · 28 页
「ほいほい。……あたりやした。……だがねえ親方、こんなご時世に、金なんか持っていたって仕方ありませんね」
「何故よ」
「脱走武士なんかがやって来て、軍用金だといって、引攫って行ってしまうじゃアありませんか。……親方ア金持だというからそこんところを余程うまくやらねえと。……」
「うるせえ。仕事に精出しな」
劇しく詈合う声が聞え、太刀音が聞え、続いて女の悲鳴が聞えたのは、この日の夜であった。
沖田総司は、枕元の刀を掴み、夜具を刎退け、病で衰弱しきっている体を立上らせ、縁へ出、雨戸を窃と開けて見た。とりこにしてある沢山の植木――朴や楓が、林のように茂っている庭の向うが、往来になっていて、そこで、数人の者が斬合っていた。あッという間に一人が斬仆され、斬った身長の高い、肩幅の広い男が、次の瞬間に、右手の方へ逃げ、それを追って数人の者が、走るのが見えた。静かになった。
「浪人どもの斬合いだな」
と総司は呟き、雨戸を閉じようとした。すると足下から
「もしえ」
という女の声が聞えて来た。さすがに驚いて、総司は足下を見た。縁に寄添い、一人の女が、うずくまっていた。
「誰だ」
「は、はい、通りがかりの者でございますが……不意の斬合で……ここへ逃込みましたが……お願いでございます……どうぞ暫くお隠匿……」