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こうしゅうちんぶたい

甲州鎮撫隊

国枝 史郎

「講談倶楽部」1938(昭和13)年7月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,891 字 · 28 页

青空文庫

「悪いか」

「物には順序ってものがあるよ」

「惚れるにもか」

「何んだって!」

「お前の身分は何なんだい」

「長州の桂小五郎様に頼まれた……」

「隠密だろう」

「あい」

「そこで細木永之丞へ取入った」

「新選組の奴等の様子さぐるためにさ」

「ところが永之丞にオッ惚れやがった」

「莫迦お云い。……彼奴の口から新選組の内情聞いたばかりさ……池田屋の斬込へも、彼奴だけは行かせなかったよ」

「手柄なものか。……彼奴の方でも手前にオッ惚れて、ウダウダしていて、機会を誤ったというだけさ」

「そのため永之丞さん斬られたじゃないか。……新選組の奴等を一人でも減らしたなア妾の手柄さ」

「ところが手前、今度は永之丞を斬った沖田総司を殺すんだと云い出した」

「池田屋で人一倍長州のお武士さんを斬った総司、こいつを討ったら百両の褒美だと……」

「懸賞の金を目宛てにして、総司を討ちにかかったというのかい。体裁のいいことを云うな。そいつア俺の云うことだ。手前は、可愛い永之丞の敵を討とうと、それで総司を討ちにかかったのさ。……そんなことは何うでもいいとして、その手前が何処がよくて惚れたのか、総司に惚れて、討つは愚、介抱にかかっているからにゃア、埒があかねえ。