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こうしゅうちんぶたい
甲州鎮撫隊
国枝 史郎
「講談倶楽部」1938(昭和13)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,891 字 · 28 页
と、お千代は、疲労と不安とで、今にも気絶しそうな心持の中で思った。
(そうして、総司様の前で、総司様から下された、縁切りのお手紙をズタズタに裂いて、妾は云ってあげる「いいえ、妾は、総司様の女房でございます」って)
そのお千代が、下総流山の、近藤勇たちの屯所の門前へ姿を現わしたのは、四月三日のことであった。近藤勇や土方歳三などが、脱走兵鎮撫の命を受け、幕府から、この地へ派遣されたと聞き、恋人の総司もその中にいるものと思い、訪ねて来たのであった。しばらく門前に躊躇していると、門内から、二人の供を従え騎馬で、近藤勇が現われた。
「近藤様!」
と叫んで、お千代は、馬の前へ走出し、
「沖田様は※(感嘆符疑問符、1-8-78)」
「お千代か!」
と勇は、さもさも驚いたように云った。
「沖田か、沖田は江戸に居る。千駄ヶ谷の植木屋植甚という者の離座敷で養生いたしておる。……詳しいことも聞きたし、話しもしたいが、わしは是から、越ヶ谷の、官軍の屯所へ呼ばれて出頭するので、ゆっくり話しておれぬ。……わしの帰るまで、屯所内で休んでおるがよい。知己の土方が居る」
と云いすてると、馬を進めた。