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こうしゅうちんぶたい
甲州鎮撫隊
国枝 史郎
「講談倶楽部」1938(昭和13)年7月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,891 字 · 28 页
四月十一日、江戸城が開き、官軍が続々ご府内へ入込んで来た頃、沖田総司は、臨終の床に在った。枕元には、植甚や、その家族の者が並んで、静まり返っていた。過ぐる晩、お力がやって来て切りかかったのを防いだ時、大咯血をし、それが基で、総司の病気は頓に悪化したのであった。近藤勇が、官軍の手で、越ヶ谷から板橋に送られ、其処で斬られたということなども、総司の死を、精神的に早めたのでもあった。不幸なお千代が、やっと植甚の家を探しあてて、訪ねて来たのは、この日であった。植甚の人達は、以前からお千代のことは聞いて知っていた。それと知ると、お千代を直ぐに総司の枕元へ進れて来た。
「沖田様!」
とお千代は、もう眼も見えないらしい、総司に取縋り、耳に口を寄せて呼んだ。
「お千代でございます! 京都から訪ねて参った、お前の女房、お千代でございます!」
その声が心に通ったとみえて、総司の視線がお千代の顔へ止まった。
「お千代!……わしの女房!……然うだ!」
しかしその顔に俄に憎悪の表情が浮かび、
「おのれ、お力イ――ッ」
と云った。それが最後の言葉であった。
翌月の十五日に始まったのが、上野の彰義隊の戦いであった。