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こうがさぶろうこはくのパイプじょ
甲賀三郎『琥珀のパイプ』序
平林 初之輔
「琥珀のパイプ」春陽堂、1926(大正15)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,101 字 · 3 页
いわゆる文壇の小説家という人たちは、たいてい似たり寄ったりの生活をしている。したがってこれらの人たちが自分の身辺の出来事を報告した小説は、自然、千遍一律に流れやすい。近頃の文壇の作品には特にこの傾向が甚しくなってきた。そこで読者の方からは、何かもっと毛色の変わった、刺激の強い、興味のある読み物を要求してくるようになった。探偵小説は、こうした要求に答えるために生まれてきた新興文芸の一つであると見ることができよう。
生まれた事情が、そういうわけであるから、探偵小説の作家の方にも毛色の変わった人がずいぶん多い。本書の著者のごときも、変わった方の一人で、ペン・ネームだけを聞くと、戦国時代の武士か何かのようだが、どうして近代人のちゃきちゃき、窒素研究所のラボラトリーで、試験管をいじくることを職業としている工科出身の小壮有為なお役人さんである。
試験管と探偵小説、お役人さんと小説家、こう並べると雪と炭と並べるのと、大してかわりはないように考える浅はかな人があるかもしれんが、そういう人たちは、ファウストの作者が植物学者だったり、ミゼラブルの作者が政治家であったりしたことをご存じないのである。