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こうがさぶろうこはくのパイプじょ

甲賀三郎『琥珀のパイプ』序

平林 初之輔

「琥珀のパイプ」春陽堂、1926(大正15)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,101 字 · 3 页

青空文庫

小説家の生活は原稿とペンとの間にのみ横たわると考えているのである。

私は本書の著者のような多方面な趣味と知識とをもっている作者にして、はじめて、空想と現実との両端をきわめ、詩の世界と科学の世界とをむすびつけることができるのであると思う。そして、このことは、まさに現下文壇の単調を破ることを使命の一つとして生まれてきた探偵小説の作者に、何よりも期待せねばならぬ条件ではなかろうか?

とりわけ、本書の作者は、探偵小説界における本格派の巨星として一般から期待されている人であるだけ、処女作「琥珀のパイプ」から、最近の力作「ニッケルの文鎮」に至るまで、いずれも探偵小説の正道をふんだものであるから、その方面に興味をもつ読者には十分の満足を与えることであろう。短い紙面に複雑な内容を盛って、すらすらとさばいてゆく手際に至っては、探偵小説界に、小酒井、江戸川両耆宿をはじめ新人少なからずといえども、氏の右に出ずるものはまずなかろうと思う。けだし氏の頭のよさのしからしむるところであろう。

頃日、作者甲賀氏、小生をとらえて、著作集を出すから何か序文を書けという。到底その任にあらざることは知りながら、ことわることのいたって下手な小生のこととて、ついうかうかとひき受けて、この駄文を草し、可惜錦上枯木を添ふるの不風流をあえてした。