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しんようどうき
申陽洞記
田中 貢太郎
在线阅读田中 貢太郎《申陽洞記(しんようどうき)》,假名注音日语阅读。JLPT N2,点词查义。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,175 字 · 11 页
元の天暦年間のことであった。隴西に李生という若い男があった。名は徳逢、年は二十五、剛胆な生れで、馬に騎り、弓を射るのが得意であったが生産を事としないので、郷党の排斥を受けて、何人も相手になってくれる者がない。しかたなしに父の友達で桂州の監郡をしている者があるので、その人に依って身を立てようと思って、はるばると桂州へ往ってみると、折角頼みにしていた人が歿くなっていて、世話になることができない。故郷へ帰ろうにも旅費がないので困ったが、その辺は山国で有名な山が多いので、李生はその山へ眼を著けて、猟をして自活をすることに定め、毎日弓を持って山の中へ出かけて往った。
ある日平生のように弓を持って山へ往ったところで、一匹の鹿が林の中から出てきた。李生は好い獲物と思ったので、急いで矢をつがえて射ようとした。獣は驚いて山の方へ逃げだしたが、その逃げ方が非常に早いので、矢を放すことができない。それでも李生は逃がしてたまるものかという気で、どんどん追っ駈けて往った。獣の姿は木の陰になったり草の中になったりして、李生に矢を放す機会を与えなかった。
山のうねりがあり、岩の並んでいる谷底があり、雑木の林があった。