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まちのてんし

町の天使

小川 未明

「赤い鳥」1926(大正15)年1月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,100 字 · 9 页

青空文庫

Sという少年がありました。

毎日、学校へゆくときも、帰るときも、町の角にあった、菓子屋の前を通りました。その店はきれいに飾ってあって、ガラス戸がはまっていて、外の看板の上には、翼を拡げたかわいらしい天使がとまって、その下を通る人々をながめていたのであります。

少年は、すこし、時間のおくれたときは、急いで、夢中でその前を過ぎてしまいましたけれど、そうでないときは、よくぼんやりと立ち止まって、毎日のように見る天使を、飽かずに仰いでいることがありました。

なぜなら、その天使は、あちらの雲切れのした、北の方の青い空から飛んできて、ここにとまったようにも思われたからでした。少年には、それほど、あちらの遠い空が、なんとなくなつかしかったのであります。そして、その天使と青い空とを結びつけて考えると、美しい、また愉快ないろいろな空想が、ひとりでに、わいてきたからであります。

「おまえは、いつ、あのあちらの空へ帰ってゆくの?」と、小さい声でいったりなどしました。しかし天使は、ただこれを聞いても笑っているばかりでした。

雨の降る日も、天使は、そこにぬれながらじっとしていました。