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がぼう
画舫
豊島 与志雄
――近代伝説――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,863 字 · 22 页
陳秀梅は席にじっと落着いたまま、火桶に片手をかざして、船頭の方を眺めました。二十七八歳の青年で、画舫の水夫としての普通の身装ですが、眉秀でて口元が緊り、頼もしい精神力を偲ばせる顔立でありました。
「あんたが、李景雲さんですか。」と秀梅はいいました。
突然、丁寧に呼びかけられて、青年は棒のようにつっ立ちました。
「あんたのことは、うちの徐康から聞いて、よく知っています。もとは立派な家柄だったとか、そして、室にはいろいろな書物が一杯並んでおり、頭にはいろいろな知識を一杯つめこんでいなさるとか、聞きました。だけど……。」
秀梅の頬からやさしい微笑が消えて、真面目な色が眉根に寄りました。
「そういうことよりも、わたしはなんだか、あんたをじかに、よく識っているように思えますが……。」
「私もよく存じあげております。」と李景雲はいって、なぜか、顔を赤くしました。そしていい添えました。「陳家の奥様のこと、よく存じあげております。」
「いいえ、そういうことではありません。」と秀梅は押っかぶせていいました。「じかに、どこかで、よく識っているような気がしますが……。」
李景雲はうつむいて立っていましたが、呟くようにいいました。