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がぼう
画舫
豊島 与志雄
――近代伝説――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,863 字 · 22 页
然しそれは、遅きに過ぎはしなかった。私は自分の力を知るに及んで、同時に、自分の恋の深さをも知ったのだ。
私は陳秀梅さんの前に跪いて、いつかの画舫の中でのように跪いて、告白したのだ、私はあの初陽台の時から、あなたを恋しておりましたと。
その時のあの人の蒼ざめた神々しい顔は、私の眼の中にはっきりと残っている。永久に残るであろう。だが私は、瞬間、それに堪えきれなかった。
私はあなたを恋しております。けれど、これは恐らく天上的な恋に終るでありましょう。私の恋も、またあなた自身も、或る貪慾な男によって辱しめられました。二三日黙ってお待ち下さい、すべてが明らかになりますでしょう。
それだけをいって、私は逃げ出したのだった。あの人は大凡のことを覚ったに違いない。然し必ずこれを持ちこたえてくれるに違いない。今となっては、あの人も私を愛してくれてることが明らかだ。愛は女の最強の支柱だ。
もはや私に残された途はただ決行のみだ。その他の途は凡て塞がれている。
それもよろしい。この土地に別れを告げることが、私の宿志ではなかったか。西湖を銭塘江岸へと展開させないところに杭州の頽廃があるとは、敵の口にまで上せられる私の持論だった。