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たたまれたまち
畳まれた町
国枝 史郎
「サンデー毎日」1927(昭和2)年7月17日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,340 字 · 7 页
ペンキ塗のがさつな建物なのである。
その事務所めいた建物のうしろ――大ビルディングの前の方に、ゴチャゴチャと沢山の小家があった。いずれも安っぽい洋風の家で、町の美観を傷つけていた。
ところで往来の右側と来ては、全く形容のしようもないほど、小さい、貧弱な、和洋折衷の――色ばっかりが、けばけばしく、造作からいえばやにっこい、数え切れないほどの住宅が――調子のこわれた音楽のように、文字通り目茶苦茶に櫛比していたが、それは全く見る人の心を、都会嫌忌にまで導くに足りた。不快な存在といわなければならない。自然そういう家々の中に、もぐり込んで住んでいる人間をも、軽蔑しなければならないだろう。
そういう町を遮断するように、運河めいた堀川が横たわっていた。苫をかむった四個の舟、煙を吐いている一個の川蒸汽、浮かんでいるものといえばそれだけであった。
石造の橋がかかっていた。
それは本当に立派な構造で、美しい人だけが通らないことには、どうにも不似合だと思われるほどに、磨きさえもかかっているのであった。
だから探偵が欄干により、ぼんやり町の方を眺めているのは、十分冒涜といわなければならない。