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ぎもんのきんかい

疑問の金塊

海野 十三

「キング」1934(昭和9)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,600 字 · 32 页

青空文庫

それに引きかえ、カンカン寅捕縛と共に、明かな失望を抱いたのは、この壮平爺さんだった。彼はあの古い建物の持ち主だった。彼は本牧で働いている彼の一人娘清子を除いては、この古い建物が彼の唯一の財産だった。ところで壮平爺さんは、目下大変な財政的ピンチに臨んでいるのだった。それは先年、ついウカウカと高利貸の証文に連帯の判を押したところ、その借主がポックリ死んでしまって、そのために気の毒にも明日が期限の一千円の調達に老の身を細らせているのだった。下手をすれば、娘の清子を棲みかえさせて、更に莫大な借金を愛児の上に掛けさせるか、それとも首をくくって死ぬより仕方がなかったのだった。詮方なく、物は相談と思い、カンカン寅の許を訪ね、あのボロボロの建物を心ばかりの抵当ということにして(あれでは二百円も貸すまいと云われた)、一千円の借金を申込んだ。

寅は何と思ったか、それを二つ返事で承知して、壮平爺さんを帰らせた。それは今から一月前のことだった。しかしカンカン寅は一向に金の方は渡す様子がない。それで催促にゆくと、期限の前日までに渡してやろうという話だった。ところが明日が約束の日という昨夜になって、カンカン寅が突然警察へ監禁されてしまったので、爺さんは失心せんばかりに駭いた。