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ぎもんのきんかい

疑問の金塊

海野 十三

「キング」1934(昭和9)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,600 字 · 32 页

青空文庫

ぐずぐずしていりゃ、カンカン寅の一味にひどい目に遭わされるぞ」

「……」

「そしてその五千円だが、それも爺さんにあげるよ。小さいときいろいろと可愛がって貰ったお礼にネ」

「五千円を?」と壮平老人は目を丸くして「五千円よりもその言葉の方が嬉しいが、一体わし達はどこへ行けばいいのかネ。こうなると、わしはお前のところから遠く離れるのが心細くなるよ」

老人は悦びのあとで、また両眼をうるませた。

「満洲へゆくんだ。丁度幸い、今夜十一時に横浜を出る貨物船清見丸というのがある。その船長は銀座生れで、親しい先輩さ。そいつに話して置くから、今夜のうちに港を離れるんだ」

「満洲かい。……それもよかろう」

「じゃ娘さんに話をして、直ぐに仕度にかかるんだ。外には誰にも話しちゃ駄目だぜ」

「そりゃ大丈夫だ」と老人は肯いて「じゃ、万事お前さんの云うとおりにしよう。それでは順序として、まず五千円の商談をして来よう」

「ちょっと待った」と私は老人を呼び止めた。「あの建物の取引だが、今夜の十時にするといって呉れ」

「莫迦に遅いじゃないかネ。いま直ぐじゃ拙いのかい」

「ちょっと拙いのさ。というのは、あれを私が買ってから、中身を少し搬び出してしまったのよ、そいつを元通りに返すとすると、どうしても午後十時になる」