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ぎもんのきんかい

疑問の金塊

海野 十三

「キング」1934(昭和9)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,600 字 · 32 页

青空文庫

二人は意気揚々と本庁へ引上げていったことだろう。

そのとき、解纜を知らせる銅鑼の音が、船首の方から響いてきた。いよいよお別れだ。私は帽子に手をかけた。

「お父さん。――」

いままで黙って聞いていた清子が、突然顔をあげた。

「なんだ、清子」

「あたしは船を下りるわよ」

そういうが早いか、清子はトランクを両手で持ち上げた。

「なにを云うんだ。横浜にいちゃ、生命がない。カンカン寅の一味は張り子の人形じゃないぞ」

「生命が危いくらい、あたし知っているわ。でも……でも、あたし死んでもいいのよ、政ちゃんの傍に少しでも永く居られるなら……」

清子は憑かれたような眸で、私の方に顔を向けた。

壮平は気が転倒してしまって、一語も発することができないで居る。銅鑼は船内を一巡して、また元の船首で鳴っていた。出発はもう直ぐだ。

肚を決めた私は、イキナリ清子の手からトランクを取った。

「まあ嬉しい。あたし下りてもいいの」

「いや、いけない」

私は手に持ったトランクをソッと下に下ろした。清子は顔を両手の中に埋めた。私はトランクの上に静かに腰を下ろした。そしていつまでも動かなかった。銅鑼はもう鳴りやんで、清見丸は静かに動き出した。