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くじょしょうろく

痀女抄録

矢田 津世子

「改造」1939(昭和14)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 32,578 字 · 65 页

青空文庫

中尾が掠りを取ることを念に入れておいて、手数料は手取り利子の七分ということにした。

中尾は龍子の金を信託された責任を負い、そして、龍子は、その委託金の融通権限をもっていた。

この歌うたいは、笑窪のよったあどけない顔で、いろいろな指示をした。貸し金は小口を主として、返済は三ヵ月限度とし、貸付範囲はサラリーマンを主としていた。

或る日も、中尾は訪ねてきて、こんなふうに切り出した。

「千三百円ばかりどうでしょう? 銀行員ですがね」

「担保は?」

「それがね、郷里に地所があるとか言ってるんですがね、どうも、あやしいんでね」

「調べに行くんなら調査旅費を出させなさいな。いつかの川越みたいに、持ち出しの徒労帰りじゃあ……」

「いやあ、あれを言われちゃあ」

と、中尾は大袈裟に頭をかいた。「当人はね、保証人を立てるようにしたいって言ってますが、どんなもんでしょう?」

「保証人なら少し割り高に貰わなくっちゃあ、ねえ」

「八銭というところでしょうかな」

「九銭九銭。中尾さんはお人が良いから駄目よ。きっと一杯奢られたのね」

「一杯は一杯でも、珈琲じゃあねえ」

と、言いざま、中尾は眉をひらいてわっはっは、と笑った。