轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

くじょしょうろく

痀女抄録

矢田 津世子

「改造」1939(昭和14)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 32,578 字 · 65 页

青空文庫

繍の手をよくしているということは龍子も知っていたから、これを重宝がって、半襟だの帯だの袱紗だのクッションだのに、無暗と刺繍をさせた。そして、これを知人や弟子たちへの贈り物にもした。

「ねえ、お寿女さん、こんなきれがあまっているけど、花模様か何かの刺繍してスリッパでも拵さえたらどうかしら。可愛らしいのが出来るでしようねえ」

小ぎれ箱をかきまわしていた龍子が、はずみ立って、こんなことを言うときがある。自分の思いつきに軽い興奮をおぽえて、小ぎれをいろいろに取り出して並べながら、

「お弟子さんたちへスリッパの贈り物をしようかしら。残りぎれのお手製スリッパなんて、ちょっと気がきいててよ」

弟子たちからは何かにつけて高価な贈り物が届けられるので、龍子も時には返礼をする。そして寿女は吩咐けられてクリスマスまでの一と月足らずの間に精を出して、二十足あまりのスリッパの分に刺繍を仕上げなければならない。かかり詰めていて、電話のベルにも気が付かずにいて、よく龍子に小言をいわれた。

龍子にかしずくこと、龍子に命じられ龍子に小言をいわれることさえ、寿女には歓びであった。龍子の傍近くに居られるということだけでも、寿女は無上の満足感動をおぼえていた。