轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

くじょしょうろく

痀女抄録

矢田 津世子

「改造」1939(昭和14)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 32,578 字 · 65 页

青空文庫

話しが、いつか、故人のことになった。

今は額になって師匠のうしろにかかっている鷹の刺繍を、弟子たちは口々に賞め讃えた。師匠も振り返って、しみじみと眺められた。

「尾久へ行ってから葉書を寄越してくれたことがあったが、……どうも、段々出ぎらいになったらしい」

師匠は、いつもの静かな声で、こう言われた。そして、眼鏡の具合をなおして、また、額に視入った。

「いつだったか、……そうそう、この春のお彼岸のお中日の日でしたよ。お宅で、おはぎを御馳走になったのを覚えていますから」

と、俊男が葛岡氏へ遠慮深く斯う前おきをして話し出した。「お宅へ届け物がすんで、あそこの路地を出たところで寿女さんに会ったんです。あんまり偶然だったもんですから、僕はホウって大きな声を出してしまったんです。寿女さんは、せかせかしてすぐに逃げそうにしたんで、僕は、どうしたんですか、って追っかけたんですが、そこまで用達にきたとか何んとか言って、寿女さんはとっとと行ってしまいました。あんなに小っちゃくっても、歩くの随分疾いんですね。せむしの早足っていうけど……」

と、言いかけて口を噤んだ。彦松が笑いかけて、併し、見廻わして直ぐに抑えた。