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はっくつしたびじょ

発掘した美女

坂口 安吾

「講談倶楽部 第五巻第四号」1953(昭和28)年11月10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,882 字 · 29 页

青空文庫

「それじゃ、ワラジだけ穿きなさい」

よそから二人の足に合うような古びた地下タビを探しだしてきて、その上に、ワラジをはかせた。地下タビは穴だらけなのだ。初音サンは幸いにもズボンを一着もってきたので、それが役に立ったのである。

用意ができて出発した。昨日来た道、自動車の止ったところまで大迂回して、谷の向う側の頭上へいったん戻ってくるのである。バカバカしい迂回だが、そこまではワラジをはくほどの難路ではない。

足下に断崖があり、目の下に旅館があり、滝が見えた。梅玉堂が叫んだ。

「アッ! 滝壺に人が。ヤ、例の娘だ」

「アハハ。あの娘は滝壺へ用たしに行くだよ」

娘は全裸で滝壺に遊んでいる。用をたしているのかも知れない。夏とはいえ、海抜七百九十米、気温は平時二十二度ぐらいである。この谷川はわりと水温が高いというが、それでも谷川である。東京の水道の水とは話がちがう。

そのうちに、娘が滝に近づいた。滝の下にかかったと思うと、滝に打ちのめされたらしく、いきなり横倒しになって、水底に消えてしまったのである。

「ヤ、大変だ」

「消えたままね」

「ヤ、一夫じゃないか」

「そうよ。一夫サン、シッカリ」