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しろいあさ

白い朝

豊島 与志雄

――「正夫の童話」――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,920 字 · 35 页

青空文庫

いろいろ、話したいことがあるんです。何かと、聞きこんだこともあるし……。兄さんの覚悟を聞いとかなくちゃならない。真剣な話ですよ。どこか、外に出ましょう。自動車は待たしてあるんです。」

云うだけ云って、康平さんは、どこかに電話をかけに立っていきました。戻ってくると、初めて気がついたように、一座を見渡しました。

「みんな起きてるのかい。正夫もいるんだね。……もう何時です。酒をのむなら、自分一人でおのみなさいよ。みんなを起しとくという法は、ないでしょう。」

「今夜は、特別だよ。」と芝田さんはにこにこしています。

「早く、仕度をなさいよ。……その間に、一杯もらいましょうか。」

康平さんは杯に手を出しました。

駒井さんはしつっこく眼を伏せて、室の隅にじっとしています。正夫は縁側に腰掛けて、闇の中に眼をやっています。

「おい、君たちも一杯やれよ。」と康平さんは誰にともなく声をかけました。「こんなに遅くまで、気の毒だなあ。おじさんの真似しちゃいかんぞ。」

そして、駒井さんにも正夫にも、杯をさすのです。二人とも、お辞儀をしてつつましくのみました。どういうものか、康平さんには親しみがもてないのです。