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しろいあさ

白い朝

豊島 与志雄

――「正夫の童話」――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,920 字 · 35 页

青空文庫

表の檜葉にチビがのぼっていたのも、こうなると少し気にかかります。

正夫は立ちあがって、裏の梅の木のところへ行ってみました。梅の実がたくさんなっています。それを一つ取ってかじりましたが、すっぱくて顔をしかめました。

梅の木の向うに、五六坪の狭い畑があります。畑といっても、何にもつくってありません。芝田さんが時々、襯衣一つになって、汗を流しながら耕してる、ただそれだけの地面です。

「僕はほかに運動をしないから、こんなことをしてるんだが、然し、土いじりをすることは、何よりも身体にいいし、随って、何よりも頭にいいし、随ってまた、身体にいいよ。」

そんなことを云いながら、芝田さんは、落葉を堆く持ちこんで、それを土に埋めたり、また掘り返したりしていました。この頃はそれにも倦きてか、ほうってあるとみえて、青い草の芽が、あちこちに針のように出ています。

正夫はその畑地を、微笑んで眺めながら、また、梅の実を一つ取りました。

「正夫さん……。」

凉しい声で呼ばれました。駒井さんだということは分っています。駒井さんの声はいつも凉しく感ぜられるのです。

「まあ、方々探したのに……。