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しろいはな
白い花
種田 山頭火
「愚を守る 初版本」1941(昭和16)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,065 字 · 3 页
どうにもこうにも自分が自分を持てあますことがある。そのとき、露草の一茎がどんなに私をいたわってくれることか。私はソロモンの栄華と野の花のよそおいを対比して考察したりなんかしない。ソロモンの栄華は人間文化の一段階として、それはそれでよいではないか。野の花のよそおいは野の花のよそおいとして鑑賞せよ。
一茎草を拈じて丈六の仏に化することもわるくないが、私は草の葉の一葉で足りる。足りるところに、私の愚が穏坐している。
死は誘惑する。生の仮面は脱ぎ捨てたくなるし、また脱ぎ捨てなければならないが、本当に生き抜くことのむずかしさよ。私は走り出て、そこらの芒の穂に触れる。……
若うして或は赤い花にあこがれ、或は「青い花」を求めあるいた。赤い花はしぼんでくずれた。青い花は見つからなかった。そして灰色の野原がつづいた。
けさ、萩にかくれて咲き残っている花茗荷をふと見つけた。人間の残忍な爪はその唯一をむしりとったのである。
葉や株のむくつけきに似もやらず、なんとその花の清楚なことよ、気高いかおりがあたりにただようて、私はしんとする。
見よ、むこうには茶の花が咲き続いているではないか。