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しろいみち

白い路

種田 山頭火

「層雲 大正六年一月号」1917(大正6)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,397 字 · 3 页

青空文庫

久し振りに栗を食べた。なかなか甘い。故郷から贈ってくれたのだと思うと、そのなかに故郷の好きな味いと嫌な匂いとが潜んでいるようだ。

午後、妻子を玩具展覧会へ行かせる。久々で母子打連れて外出するので、いそいそとして嬉しそうに出て行く。その後姿を見送っているうちに、覚えずほろりとした。

下らない空想をはらいはらい、仕入の事や、店頭装飾の事を考える。――絵葉書とか額椽とか文学書とかいうものは、陳列の巧拙によって売れたり売れなかったりする場合が多い。同業者の一人が「我々の商品は売れるものでなくて売るものである」といったそうであるが、実に経験が生んだ至言である。米屋や日用品店なぞと違って、いつも積極的に自動的に活動していなければならない。始終中、清新の気分を保っていなければならない。苦しい事も多い代りには、面白い事も多い。

二時間ばかり経って、妻子が帰って来た。子供が、陳列してある玩具を片端から買ってくれといって困ったという。まだ困った顔をしている。――滑稽な悲劇である。

夕方、駅から着荷の通知があった。在金一切掻き集めて、受取に行こうとしているところへ、折悪く納税貯金組合から集金に来た。