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しろいみち

白い道

徳永 直

「新潮」1948(昭和23)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,169 字 · 36 页

青空文庫

この不安は、あのハンチングをかぶった学生のボルに話してもわからない。三吉がみたボルは、まだ学生ばかりであったが、三吉が背後にひいている生活、怪我してねている父親、たくさんのきょうだい、鼻のひくい嫁をすすめる母親、そんなことは説明しようがないのである。――

――裂けめだ。――

高島が鹿児島へ発った翌日の夕方、三吉は例のように熊本城の石垣にそうて、坂をくだってきて、鉄の門のむこうの時計台をみあげてから、木橋のうえをゆきかえりしながら、運命みたいなものを感じていた。――若し彼女がうけいれてくれるならば、竹びしゃく作りになって永久に田舎に止まるだろう。労働者トリオの最後の一人となって朽ちるだろう。――そしてその方が三吉の心を和ませさえした。満足した母親の顔と一緒に、彼女の影像がかぎりなくあたたかに映ってくる。それはこの咽喉がかわくような気持から三吉をすくってくれるのであったが、とたんに、三吉はあわてだす。昨夜から考えていること、彼女にむかって、何と最初にいいだせばいいだろう? ――深水から話があって、きょう三吉は彼女と「見合」するのである。

電気ベルが鳴りだして、鉄の門があいた。