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はくとうのうた

白塔の歌

豊島 与志雄

――近代伝説――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,450 字 · 43 页

青空文庫

「お頼みのものです。古物だが、まだ使われてはいません。ちょっと錆びてたところは、僕が磨いておきました。」

汪紹生はそれを受取りました。小布の中には、ボール箱に、革のサックのついた小型の拳銃がはいっていました。

「操縦は簡単だから、分っていますね。弾は十個だけあります。そいつが、実は厄介でしたよ。」

汪紹生はそれをまた小布に包んで、内隠しにしまいました。そして紙幣を二十枚渡しました。

「それから、あとのは、どれほどあげたらいいかしら。」

「あとの……あああれですか。あれは、僕からいい出したんだから、いかほどでもいいんですが、それじゃあ、十枚下さい。」

汪紹生が更に十枚の紙幣を差出すと、相手はそれを無造作に受取りましたが、黒眼鏡の奥から視線をじっと汪紹生に注いでいいました。

「これで終りです。約束は守って下さいよ。つまり、後の分ですっかり帳消しです。あなたが僕から一件を受取ったことも、僕があなたに一件を調達したことも、凡て無かったことになるのです。忘れたのでなく、そのようなことは無かったのです。宜しいですか。」

「宜しい。約束だ。」

「約束などもないんです。」

「なんにもない。