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はくちゅうむ
白昼夢
江戸川 乱歩
「新青年」博文館、1925(大正14)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,690 字 · 8 页
ホラ、君、見てごらん。その死骸はちゃんと俺の店先に飾ってあるのだよ」
男の目が私を見た。私はハッとして後を振り向いた。今の今まで気のつかなかったすぐ鼻の先に、白いズックの日覆……「ドラッグ」……「請合薬」……見覚えのある丸ゴシックの書体、そして、その奥のガラス張りの中の人体模型、その男は、何々ドラッグという商号を持った、薬屋の主人であった。
「ね、いるでしょう。もっとよく私の可愛い女を見てやって下さい」
何がそうさせたのか。私はいつの間にか日覆の中へ這入っていた。
私の目の前のガラス箱の中に女の顔があった。彼女は糸切歯をむき出してニッコリ笑っていた。いまわしい蝋細工の腫物の奥に、真実の人間の皮膚が黒ずんで見えた。作り物でない証拠には、一面にうぶ毛が生えていた。
スーッと心臓が喉の所へ飛び上った。私は倒れ相になる身体を、危くささえて日覆からのがれ出した。そして、男に見つからない様に注意しながら、群集の側を離れた。
……ふり返って見ると、群集のうしろに一人の警官が立っていた。彼も亦、他の人達と同じ様にニコニコ笑いながら、男の演説を聞いていた。
「何を笑っているのです。