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しろばなのあさがお

白花の朝顔

泉 鏡花

「週刊朝日 第二十一ノ十六号(春季特別號)」1932(昭和7)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,880 字 · 62 页

青空文庫

しかり、明星の天降って、梁を輝かしつつ、丹碧青藍相彩る、格子に、縁に、床に、高欄に、天井一部の荘厳を映すらしい。

見られよ、されば、全舞台に、虫一つ、塵も置かず、世の創の生物に似た鰐口も、その明星に影を重ねて、一顆の一碧玉を鏤めたようなのが、棟裏に凝って紫の色を籠め、扉に漲って朧なる霞を描き、舞台に靉靆き、縁を廻って、井欄に数うる擬宝珠を、ほんのりと、さながら夜桜の花の影に包んでいる。

その霞より、なお濃かに、靄に一面の胡粉を刷いて、墨と、朱と、藍と、紺青と、はた金色の幻を、露に研いて光を沈めた、幾面の、額の文字と、額の絵と、絵馬の数と、その中から抜き出たのではない、京人形と、木菟は、道芝の中から生れて出たように上ったが。――

「車夫、ここだ、ここでおろして。……待っててもらおう。」

俥を二台、東の石段で下りたのです。

「逆縁ながら、といっては間違いかね、手を曳いてあげようか。芝居茶屋の階子段のお手際では、この石段は覚束ない。」

などと、木菟が生意気にいうと、

「大事おへん、前刻落ちたら、それなり、地獄え。上が清水様どすよって、今度は転んだかて成仏どす。