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しろばなのあさがお

白花の朝顔

泉 鏡花

「週刊朝日 第二十一ノ十六号(春季特別號)」1932(昭和7)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,880 字 · 62 页

青空文庫

ゆかた一枚、それも織ったんじゃありません、北国人の鎧ですから、ものほしそうな瓦斯織の染縞で、安もの買の汗がにおう。

こいつを、二階の十畳の広間に引見した大人は、風通小紋の単衣に、白の肌襦袢、少々汚れ目が黄ばんだ……兄妹分の新夫人、お洲美さんの手が届かないようで、悪いけれども、新郎、膏が多いとお心得下さいまし。――綾織の帯で、塩瀬紺無地の袴。総ついた、塗柄の団扇を手まさぐる、と、これが内にいる扮装で、容体が分りましょう。

鼻の下へ、例の、指を立てて、「おおん」と飲み込んでくれました。「不思議な縁ですね、まだ下極りで、世間に発表はしないけれども、今度、仙台の――一学校の名誉教授の内命を受けて、あと二月ぐらいで任に赴く。――ま、その事になりました。ちょうど幸い、内弟子、書生にして連れて行こう、宜しくば。」……も何もない。願ったり叶ったり、話は思う壺へはまったのですが。――となりの、あの、小座敷で、あの、朝顔の、あの朝――

手細工らしい桔梗の肘つきをのせて、絵入雑誌を幾冊か、重ねて、それを枕にさして、黙って顔を見ると、ついた膝をひいて立ちしなに「憎らしい。