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しろばなのあさがお

白花の朝顔

泉 鏡花

「週刊朝日 第二十一ノ十六号(春季特別號)」1932(昭和7)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 30,880 字 · 62 页

青空文庫

」

「綺麗なお銚子。」

色絵の萩の薄彩色、今万里が露に濡れている。

「妻の婚礼道具ですがね、里の父が飲酒家だからですかな。僕は一滴もいけますまい、妻はのまず。……おおん、あの、朝顔以来、内でこれの出たのはそうですなあ、大掃除の時、出入りの車夫に振舞うたばかりですよ。」

「お毒見をいたします。」

お洲美さんが白い手で猪口を取った。

「注いで下さい。」

大人驚いた顔をして、

「飲むのかね。」

「大掃除の時の車夫のお銚子ですから。――この方は、あの、雲助も同然の身持だけれど……先生の可愛い弟子です。」

かねて、切れた眦が屹として、

「間違いがあると、私が、先生に申訳がありません。」

「おおん、何か、私の饒舌った意味を取違えているようだけれど、いいさ、珍らしく飲むのも可かろう……注ぐよ。」

「なみなみと。もう一つ。もっと、もう一度。」

歯ぎしみするように、きッきッと。

「ああ、飲んだ。」

と、もう白澄んだ瞼を染めた。

「境さん、いいでしょう、上げますわ。」

「駕籠屋は建場を急いでいます、早く飲もうと思ってね。」

「おいらんのようにはいきません。お酌は不束ですよ、許して下さい。」

「こっちも駆けつけ三杯と、ごめんを被れ。