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しらふじ

白藤

宮本 百合子

「孝子の俤」1944(昭和19)年12月発行

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,810 字 · 16 页

青空文庫

芝の清正公のそばの二階のあるお家であった。

初冬の時節ででもあったのではなかったろうか。二階のお座敷は賑やかで、夫人のほかに、若い男のひとも何人か居合わせ、小さいお嬢さん坊ちゃんも、そこの襖から出入りした。勿論御主人も居られた。歓待して頂いた。若い娘らしくそれを十分に感じ、くつろいだ、なついた調子で、啄木の歌がすきだというようなことまでお話しした覚えがある。

その晩も、母がそのお座敷で、私が幼い記憶にあるお孝さんと現在の古田中夫人とを結びつけかねている可笑しさを話し、一座の人々は笑いながら、無理もない、という風に私の味方をして下すった。自分も笑い出しながら、改めてそっとお孝さんのお顔を眺め、ふくよかな全体の感じにあの美しい襟もとと共通なものを知りながら、其でもやっぱり、あのひとがとりもなおさずこの方という工合にはぴったりと会得出来ず、今の姿で、環境で初対面の思いがするのを不思議に考えるのであった。

私たち中條の子供たち、特に上の二人にとって、西村の伯父様という名は、特別に親しみがあった。その伯父様はいつも、品川の伯父さんと母に呼ばれ、明治三十七年頃から数年間父が外国暮しをしていた間、若い母は子供三人、義妹義弟との生活のなかで、少なからず、「品川の伯父さん」