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しらがこぞう
白髪小僧
杉山 萠円
「白髪小僧」誠文堂、1922(大正11)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,770 字 · 194 页
家の者は、紅矢が昨日旅から帰ると、直ぐに王宮へ行って、又王宮を飛び出して、「瞬」に騎って王宮の周囲を七遍も駈けまわって、そのまま昨夜の内に行衛が知れずになったという噂を聞きまして、薩張り理由が解らず、もしや王様から大層な急用でも仰せ付かったのではあるまいか。それとも帰り途に散歩に行って、大怪我でもしたのではあるまいかと、大層気を揉んでいるところでしたが、この声を聞くや否や皆一時に、素破こそと胸を轟かして玄関に駈け付けて見ますと、こは如何に。
紅矢は余程の大怪我をしたものと見えて、顔中繃帯をして、呼吸を機ませて倒おれております。この体を見た両親や、その他の者の驚きは一通りでありませんでした。直ぐに大勢で紅矢の寝床へ担ぎ込みましたが、生憎な時は仕方のないもので、この家のお抱えの医者は、二三日前から遠方の山奥へ薬になる艸や石を採りに行った留守で、とても一月や二月で帰って来る気遣いはなく、今の間には勿論合いませんでしたから、仕方なしに宮中のお抱えの青眼先生の処へ使いを立てて、大急ぎで御出で下さるようにと頼みました。丁度青眼先生は藍丸王のお叱りをうけて家に引き籠もっているところでしたが、紅矢が怪我をしたと聞くと直ぐに承知をしまして、薬を取り揃えて出かけました。