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しらがこぞう
白髪小僧
杉山 萠円
「白髪小僧」誠文堂、1922(大正11)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,770 字 · 194 页
に開きました。そこからそろそろと音を立てぬように中に這い込んだ青眼先生は、床の上に下りると直ぐに、毒薬の瓶の口を切って右手に持って身構えをして、丸硝子の行燈の薄黄色い光りに照された少女の寝顔を又じっと見入りました。
見れば見る程美しい少女の姿。夕雲のように紫色に渦巻いた長い髪毛。長い眉と長い睫毛。花のような唇。その眼や口を静かに閉じて、鼻息も聞こえぬ位静かに眠っている姿。見ているうちにあまり美しく艶やかで、何だかこの世の人間とは思われぬようになりました。けれどもなおよくあたりを見まわすと、その髪毛の中や枕のまわりに一粒か二粒宛、紅矢の枕元に在ったのと同じ位の大きさの紅玉が散らばっているではありませんか。
青眼先生はこれを見ると思わず声を立てて――
「悪魔」
と呼びました。
この声を聞くや否やその少女は直ぐにむっくりはね起きて、青眼先生の顔を一眼チラリと見ましたが、忽ち物凄い形相になって――
「あれッ。青眼先生……妾は美紅です。この家の娘です。悪魔ではありません」
と叫びながら紫の髪毛をふり乱し、紅玉を雨のようにふり散らして、物をも云わず窓から逃げ出そうとしましたが、最早遅う御座いました。