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しらがこぞう

白髪小僧

杉山 萠円

「白髪小僧」誠文堂、1922(大正11)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,770 字 · 194 页

青空文庫

と笑いながら金貨を貰ってそのまま杖を突張って行こうとした。姫は慌てて袖に縋って――

「アレお婆さん。お話しはどうしたのです。何卒あなたの身の上話を聞かして下さいな」

「何も話す事はありませぬ。只三万日の間つまらなく長く生きていたばかりで御座います」

「まあ三万日……八十年ですわね。でもその間に何か珍しい事があったでしょう」

「アア。そうそうたった二ツありましたよ」

「それはどんな事ですか?」

「一ツは生れてはじめてお話気違いというものを見た事で御座います」

「オヤ。いつ、どこで?」

「今、ここで」

「マア。ではも一ツは?」

「十円の金貨というものをこの手に生れて初めて握った事で御座います。ほんとに有り難う御座いました。さようなら」

と云いながら袖をふり払ってどこかへ行ってしまった。

こんな風に遇う者も遇う者も皆姫を気違いか馬鹿扱いにして、散々嘲弄ってはお銭を持って行ってしまったから、一時間と経たぬうちに姫の財布はすっかり空っぽになってしまった。その中でも非道い奴はお金も何も取らない代りに――

「俺は今忙がしいんだ。そんな馬鹿の相手になってはいられない」

と剣突を喰わして行ったものもあった。