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しらがこぞう
白髪小僧
杉山 萠円
「白髪小僧」誠文堂、1922(大正11)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,770 字 · 194 页
寝台の向うにこちら向きに椅子を置いて、腕を組んで、眼を閉じて座っているのは藍丸王で、寝台の前には青眼先生が突立って、両手をさし展べています。そしてその手に縋って、青眼先生の顔を見上げている、女王の姿をした者の顔を見ると、どうでしょう。一晩夜の晩氷になってたった今まで石神の前に置いてあった、あの美紅姫に寸分違わぬではありませんか。
悪魔、悪魔と思い込んで来た紅木大臣も、これを見ると今更に、吾れと吾が眼を疑って呼吸も出来ぬ位固くなってしまいました。そうして眼を皿のようにして女王の姿を見詰めていました。
女王は髪を藻のようにふり乱し、顔の色は真青になって、震える唇を噛み締め噛み締め、はふり落ちる涙を拭いもせずに、青眼先生の顔をふり仰いでおりましたが、忽ち血を吐くような声をふり絞って叫びました――
「青眼先生。教えて下さい。これは夢でしょうか。本当でしょうか」
すると青眼先生は女王の顔を穴の開く程見ながら、落ち付いた力強い声で答えました――
「夢だか本当だかは女王様のお言葉に依って定まります。何卒、何事も包まずに、私にお話し下さいませ。私は只今王様からの御使者を受けまして、女王様が今朝濃紅姫の御逝れになった御姿を御覧になると直ぐに、恐れ多い事ながら気が御狂い遊ばして、あるにあられぬ奇妙な事ばかり仰せられるとの事。