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しらがこぞう
白髪小僧
杉山 萠円
「白髪小僧」誠文堂、1922(大正11)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,770 字 · 194 页
両方とも嘘か。向うとこちらは別か一所か。もしや眼の迷いではあるまいか。心の迷いではあるまいか。それとも夢かまぼろしかと、すっかり迷ってしまいまして、今にも太陽の光りがさし込んで来たらば、妾は消え失せてしまうのではないか。それでなくとも、このまま戸棚の外に出たならば、直ぐに眼が覚めるのではあるまいかと、迷って、恐れて、震えて、立ち竦んでおりますと、不意に窓の外に人の来る気はいがしました。
妾はこの時何だか自分の身の上に、怖ろしい事が起りかかっているように思われて、恐ろしさの余り呼吸を吐く事も出来ませんでした。そうして戸棚の中から一心に、窓の処を見つめておりますと、間もなく窓からそっと顔を出して中の様子を見た人がありました。それが青眼先生、貴方でした」
「あっ。それではあの時貴女は戸棚の中から見ておいでになりましたか」
と青眼先生は呼吸を機ませて尋ねました。
「けれどもその時の恐ろしかった事。扨は青眼先生はいよいよ妾がこの家に居る事がおわかりになって、この間の夢の中で銀杏の葉の袋を切り破った時と同じように、妾を矢張り悪魔と思って、殺しにおいでになったに違いない。