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しらがこぞう

白髪小僧

杉山 萠円

「白髪小僧」誠文堂、1922(大正11)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,770 字 · 194 页

青空文庫

重ね重ねの奇妙不思議に当り前の者ならば、屹度気絶でもするか、それとも夢を見ているのだと思って身体でも抓って見るところだが、併し白髪小僧は平気であった。昨夜も一昨夜もそのずっと前からここに居て、たった今眼が覚めたような顔をして、先に立ったお爺さんの顔を横になったまま見ていた。

お爺さんは六人の小供を従えて、寝台の前に来て叮嚀にお辞儀をした。そうして畏る畏る口を開いた――

「藍丸王様。青眼爺で御座います。お召しに依って参りました。何の御用で入らせられまするか。何卒何なりと御仰せ付けを願います」

白髪小僧はこう尋ねられても何も返事をせずに、只ぼんやりと青眼爺さんの顔を見ていた。

するとお爺さんは何やら思い当る事があると見えて、傍の小供に眼くばせをしたが、やがてその中の一人が玉のような水を水晶の盃に掬んで来て、謹しんで眼の前に差し出したから、取り上げて飲んで見ると……その美味しかった事……そうしてその水には何か貴い薬でも這入っていたものと見えて、今までの疲れも苦しさもすっかりと忘れてしまって、身体中に新らしい元気が満ち渡るように思った。

青眼爺様は白髪小僧の藍丸王が飲み干した盃を受け取って、傍の小供に渡すと直ぐに又眼くばせをして、六人の小供を皆遠くの廊下へ退けて、只独り王の前に蹲いて恐る恐る口を開いた――