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しらがこぞう

白髪小僧

杉山 萠円

「白髪小僧」誠文堂、1922(大正11)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,770 字 · 194 页

青空文庫

そうして髪毛や、眼色や、顔色が赤や、白や、鳶色や、黒等とそれぞれに違った人々が、各自に好きな仕立ての着物を着て、華やかに飾り立てた店の間を、押し合いへし合して行き違う有様は、まるで春秋の花が一時に河を流れて行くようである。けれども藍丸王の行列が見えると、こんなに繁華な往来が皆一時にピタリと静まって、見る間に途を左右に開いて、馭者は鞭を捧げ畜生は前膝を折り、途行く人々は帽子を取って最敬礼をする。その間を王の行列は静々と通り抜けて、間もなく街外れに来ると、そこから馬を早めて野を横切って、東の方に並んでいる山の中に駈け入った。

この日お供をしている四十人の騎馬武者は、皆紅矢の命令を守って他の鳥獣には眼もくれずに、只赤い羽根を持って人間の声を出す鳥が居たらばと、そればかり心掛けて、眼を見張り、耳を澄まして行った。中にも紅矢は真先に立って、もしや人間のような鳥の鳴き声がするか、赤い羽根の影が見えはせぬかと、皆と一所に油断なく気を付けて次第に山深く分け入ったが、見ゆるものとては山々の燃え立つような紅葉ばかり。聞こゆるものとては遠くを流るる谷川の音。それさえ折々は途絶え途絶えて、空には雲一つ見えず、地には木の葉一枚動かず、気味の悪い程静かに晴れ渡った日であった。