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しらがこぞう

白髪小僧

杉山 萠円

「白髪小僧」誠文堂、1922(大正11)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,770 字 · 194 页

青空文庫

「その訳はこの書物にすっかり書いて御座います」

と云いながら、懐から黒い表紙の付いた一冊の書物を出しました。

「この書物に書いてある事を読んで見ますと、白髪小僧様は今までこの国の人々が見た事も聞いた事もない不思議な国の王様なので御座います。ですからこの世の中でどんなに貴い物を差し上げても、どんなに面白い物を御目にかけても、御喜びになる気遣いはあるまいと思います。そうしてそればかりでなく、白髪小僧様が妾の命を御助け下さるという事は、ずっと前から定まっていた事で、その証拠にはこの書物には、妾が水に落ちましてから、助けられる迄の事が、ちゃんと書いてあるので御座います。決して御礼を貰おうなどいう卑しい御心で御助け下さったのでは御座いませぬ」

と決然とした言葉で申しました。

両親は云うに及ばず、大勢の人々もこの娘の不思議な言葉に、心の底から驚いてしまって、暫くはぼんやりと娘の顔と白髪小僧の顔とを見比べていましたが、何しろあんまり不思議な話しで、どうも本当らしくない事ですから、父様は頭を左右に振りながら――

「これ娘、お前は本気でそんな事を云うのか。私はどうしてもお前の話しを本当にする事は出来ない。