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しらがこぞう
白髪小僧
杉山 萠円
「白髪小僧」誠文堂、1922(大正11)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,770 字 · 194 页
と云いも了らぬうちに兵士の声が扉の外から――
「紅矢様の御出でで御座います」
と高らかに聞こえました。
王は直ぐに返事をしました――
「まだ誰もこの室に這入る事は相成らぬ。用事があるなら後に来い」
この言葉を扉の外で聞いていた紅矢は、全く夢に夢見る心地がしました。紅矢も青眼先生と同じように、王様からこのような荒々しい、菅無い言葉を受けたのは、これが初めてでした。それでなくても濃紅姫の事を思うて、胸が一パイになっていた紅矢は思わず扉に取り付いて叫びました――
「王様。王様。王様は如何遊ばしたので御座いますか。どうしてそのようなお情ない事を仰せられますか。紅矢で御座います。紅矢で御座います。何卒一度だけ御眼にかからせて下さいまし。私の妹の濃紅の事で、是非申し上げなければならぬ事が御座いますから」
「濃紅がどうしたというのだ」
「エエッ。最早王様は御忘れ遊ばしましたか。彼の御約束を御忘れ遊ばしましたか」
「忘れはせぬ。けれども約束を守るなぞという事は大嫌いになった。昨日の王と今日の王は別人だ。そんな約束を守らなくともよい。もしその濃紅姫とやらを后に為たいと思うならば、最前国中に布告さした通りに、今日から一週間の後に、国々の女と一所に宮中へ差し出せ。