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ゆりのはな
百合の花
小川 未明
「趣味」1906(明治39)年7月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,179 字 · 9 页
「いいえ、木独楽だ。」
「大きいのかい……。」
「ああ、大きいんだ。」
「僕はもう割らないがなあ……。」と太郎は溜息を洩らした。
「太郎さんは私にあの絵紙呉れないか? そうせば僕独楽を廻すけも……。」
「牛に子供の乗っている絵紙かい?」
「あれ、呉れればいいがなあ……誰か呉れんかしらん。」
「お月様が出ていて、笛を吹いている絵紙だろう?」
「うん」と勇は首肯く。
「あれを上げれば、独楽をお廻しかい。」
「廻すけども割るんなら厭だ。」
「僕はもう割らんよ。」
「じゃ絵紙は呉れるの……。」
「ああ、上げよう。」
「銀蜻蛉は明日の朝呉れるの?」
「ああ、明日の朝捕って上げるよ……。」
「独楽を割るんでないよ。え、きっと!」
「ああ、割らないってば。家に独楽はあるの……じゃ早く行って持ってお出で、待っているから。」
勇は新しい、軽そうな木独楽を持って来ました。それに較べると太郎のは厚い鉄の胴がはまっていて、なかなか重たい独楽であります。
「太郎さん、お前さんが先にお廻しよ。」
「僕?」
「そうっとお廻しよ。」
「ああ。」
「割るんでないよ、さあ手をお出し。」
と勇と太郎とは互に手を握り合って、約束をしました。