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ひゃくあしちがい
百足ちがい
山本 周五郎
「キング」大日本雄辯會講談社、1950(昭和25)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 28,491 字 · 56 页
どちらにせよ又四郎には関係がないことらしい、彼は憮然として、自分ひとりいい心持そうに大往生をとげたという雪海和尚に対して、ひそかに反感をいだいたのであった。
「おまえ嫁の話があるのだけれどねえ」
母親は頻りにそのことをもちだした。彼には彼の方寸があるので、その話は少し待って下さいといい、ひとおちつきすると、帰国の目的であるところの、かねての懸案に着手した。……彼はまず手帖を出して調べた、あしかけ五年まえに、彼は五人の相手から不当の侮辱をうけた。それを左に摘要すると、
一、簡野左馬之助 城代家老三男
某年某月某日。衆人環視の中において、とつぜん余に向い「おれの履物を揃えろ」と云い、余が欲せざる旨を述べるや「えらそうなことを云うな」と罵り、なお味噌汁で顔を洗って来い、などと嘲弄せし事。
二、大村田伝内 槍組番頭
某年某月某日。下城の途中において、酔いに乗じ、同伴者に向って「あの百足ちがいの頭がどんな音をたてるか賭をしよう」と云い、余の迷惑をもかえりみず、右手の拳骨をもって余の前頭部を殴打し、同伴者より賭け金を取得せし事。
三、唐川運蔵 年寄役運兵衛殿長男