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しんじゅとうのひみつ
真珠塔の秘密
甲賀 三郎
「新趣味」1923(大正12)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,661 字 · 16 页
私は驚いて表札を見ると花野茂としてあった。取次が出ると橋本は花野さんに御目にかかりたいと云った。
「先生は今御旅行中です」とブッキラ棒に取次は答えた。
「私もそう新聞で承知いたしました」友は云った。
「併し是非御願いいたしたい事がありますので、迷って居りますと、今朝電車で偶然久しい前外国で御目にかかった事のある一寸御名前を忘れましたが、その方がこちらと御知合だそうで、先生は御在宅の筈だと教えて下さいましたので」
「ハテな。誰だろうな」と取次は書生部屋の仲間に振り向いて云った。
「外国と云えば田村さんじゃないかね。併しあの人は先生の留守は知っている筈だがね」
「脊の高い一寸外国人のような方ですが」
「じゃ田村さんだ。どうしてそんな事を云ったろう」
「田村さんは只今どちらでしょう」すかさず橋本は聞いた。
「駿河台の保命館に御出でしょうと思います」書生は迂散くさそうに答えた。
「どうも有難うございました」礼を云って友は外へ出た。足は自と駿河台に向う。
最近に増築した保命館は此辺切っての旅館であった。幸か不幸か田村君は在宅であった。
「マッカレーさんと仰有る人から頼まれましたのですが」