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しんじゅとうのひみつ

真珠塔の秘密

甲賀 三郎

「新趣味」1923(大正12)年8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,661 字 · 16 页

青空文庫

ええ、どの入口にも鍵がかかって居りました。確かです。私共が入口を開けるのに手間取って居たものですから、曲者を逃がして仕舞いました。私共が全で共謀かなんぞになって居るように思われますので甚だ残念ですが、どうしてあの塔をあの高い窓から運び出したのでしょう」

友は窓の高さを目測したり、戸棚の周囲を丁寧に調べたりした揚句、腕を組んで瞑想を始めた。この時こそ友の頭脳の最も働いている時である事を知っている私は、黙ってそれを眺めて居た。

「窓硝子の落ちた音で気が付いたと云うのは確かですか」友は突然に聞いた。

「確かです。破片が散って居りましたり、外に硝子のこわれた所はありませんでしたから」

友は又深い瞑想に陥った。

やがて何か思いついた如く、守衛達に一礼して場外に出た。山下の菊屋で夕食をした後友は神田に行こうと云い出した。私は云うがままに彼について行った。

「何分守衛が発見してすぐ訴えないものだから、指紋は勿論、何の証拠になるようなものもない」路々友は語った。「守衛は大丈夫らしいね」

神保町の停留場で我々は降りた。その辺の迷路にも似た小路を、あちこちと二三丁歩いて、ある建物の前に来た時に、彼は立止って突然その呼鈴を押した。