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ままのてこな

真間の手古奈

国枝 史郎

「サンデー毎日」1929(昭和4)年1月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,631 字 · 10 页

青空文庫

「真間の継橋へも参ったことであります。矢張りよい景色でござりました。ここにも継橋がございますな」

いかさま継橋が見えていました。

八筋の川が流れて居りまして、一筋ごとに橋がかかっていて、継橋をなしているのでした。

継橋の数が八ツなので、そこで八橋ともいうのでした。

「憐れな伝説がございます」

左衛門の前へ穏かに坐って、左衛門と一緒に茶を喫し、長閑に話していた泉谷の主の、彦右衛門という人物は、こう左衛門にいった後で、その憐れな伝説を、古雅な言葉つきで話しました。

「仁明の御皇の御代でありましたが、羽田玄喜という医師がありまして、この里に住居して居りました。女房と申すのがこの里の庄司の、継娘でありましたが、気だての優しい美しい縹緻の、立派な女でありまして、二人の間に男の子が、二人あったそうにござります。ところが玄喜は三十歳の時に、病気でなくなってしまいましたので、女房は気の毒な寡婦の身となり、子供は孤児となりまして、家計も貧しくなりました。が、女房は健気にも、他へ再婚しようともしないで、山へ登って行って薪を拾ったり、浦へ出て行って和布をかったり、苦心して子供を育てました。