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ままのてこな
真間の手古奈
国枝 史郎
「サンデー毎日」1929(昭和4)年1月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,631 字 · 10 页
……つまり源次郎という若いお方と、喜之介という若いお方とへ、このようにお前様からおっしゃるのです『向うの河岸に海苔があります。私をいとしく思われるならば、橋を渡らずに川を泳いで、向う岸まで渡って行って、海苔をとって来て下さいまし。とって来たお方に靡きましょう』と。……もちろん私は源次郎というお方も、喜之介というお方も存じません。しかしお前様のお話によれば、いずれも立派な若旦那なので、力業だの危険な業だのには、大方不慣れでございましょう。で、漁師でさえ泳ぎかねるような、瀬の早い八筋の川を泳いで、海苔をとって来ようとはなされますまい。……さて、ご馳走になりました。そろそろ出かけることにいたしましょう。……」
後年左衛門は人にいったそうです。――
「そうだよ、お蘭という娘の顔には、死相が現れていたのだよ。これはいけないと思ったのでだんだん話しをして行くうちに、いろいろの古歌を知っていて、性質がひどく憧憬的だ。二人の男に恋されている。場所はといえば八橋といって、真間の継橋とよく似ている。ははあそれでは手児奈を気取って、二人の男へ義理を立てて、自分は美しく入水して死のう――恋を恋する気持といおうか、伝説を真似る心持といおうか……そういう心持でいるらしい。