轻松读懂日语经典作品
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めをひらく
眼を開く
夢野 久作
「逓信協会雑誌」1935(昭和10)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,759 字 · 20 页
私は本箱の片隅から老酒を取出して皆に、すこしずつ飲ましてやった。
「あっアア。腹に沁みる沁みる。良え酒でがすなあ先生。これは……」
「ウン。マッチで火を点けるとポーッと燃えるでな。あんまり飲むと利き過ぎるてや。残りはアンタ等に遣るから、家へ持って帰って、ユックリ飲むがええ」
「それあドウモはあ。勿体のうがす」
皆の話すところによると今日初めて名前を聞いた配達手の忠平は、一昨日の大吹雪の朝、郵便局を出た切り帰って来ないのだという。
その朝は郵便物が非常に少くて、東京の出版屋から私の処へ送って来た二百円の価格表記郵便物と、新聞が二通あった切りだったので、若い局長さんは山道が雪崩れで危いから今日は配達を見合わせてはドウかと云って止めにかかったものであったが、一徹者の忠平は肯かなかった。黙って二通の郵便物を持って、四里の雪の山道を、私の処へ配達すべく町の居酒屋でコップ酒を呷って出て行ったが、それっきり帰って来ない。そこでもしかしたら、最近に妻君と喧嘩別れをして、後に子供も何も無い酒飲みの忠平が、ヤケクソになって二百円を持逃げしたのではないかという疑いが掛かった。